緑内障と遺伝 遺伝子変異検査も可能な時代に
医学の進歩により、悪性腫瘍、発達障害などの精神・発達疾患、糖尿病や高血圧など多くの疾患の原因遺伝子が、徐々に特定されています。
緑内障も遺伝子が関与する疾患の一つであり、親が緑内障であれば自分も緑内障になるのではと心配されている人も少なくないでしょう。
そこで、緑内障と遺伝子との関係や新しく関連性が認められた遺伝子についてお伝えします。
ほとんどの緑内障は遺伝性疾患ではありません
緑内障にも種類があり、非遺伝性の緑内障と遺伝性の緑内障があります。
すべての緑内障が遺伝性の眼疾患ということではありません。
つまり、両親(親)が緑内障だから、その子も必ず緑内障になるかというと、そうではありません(父母のどちらかや祖父や祖母が緑内障だから子供や孫が必ずなるわけではなく、兄弟、姉妹も同様です)。
たとえば、先天性緑内障(生まれつき隅角に異常があるタイプ)や、続発先天性緑内障(リーガー症候群、マルファン症候群、スティックラー症候群、無虹彩症などの他の先天異常に合併しておこるもの。網膜剥離等の手術が原因のもの等を除く)などは、遺伝性があります。
その他の緑内障(原発開放隅角緑内障・正常眼圧緑内障や原発閉塞隅角緑内障(隅角が狭くなり(狭隅角)閉じてしまう)など)は、遺伝子疾患ではないけれど、遺伝的要因がある病気(多因子疾患:環境要因や遺伝的因子等が関係する)ということで、遺伝性要因は存在し、家族等に緑内障の方がいる場合は、そうでない人と比べて若干緑内障発症率のリスクが増すと考えられています。
また、原因遺伝子の一部は解明されています(後述します)が、眼圧亢進(眼圧上昇)につながる仕組み等については、まだ研究が必要な段階です。
ゲノム情報を活用した医療・最新治療・治療法等の実用化とあわせて、期待したいところです。
当面は、ご家族に緑内障の方がいらっしゃる方は、最初から必ず緑内障になると決めつけるのではなく、ただ疑いはあるということで、病院・眼科を定期的に受診し、各種検査(視野検査(ハンフリー視野検査等)、眼圧検査(眼圧測定)、眼底検査、視力検査、隅角検査、OCT解析等)によって、早期発見・治療につなげることで、大切な目を守ることができます。
GLC1Aが緑内障関連遺伝子として特定
病気になる遺伝子を持つ全ての人が発症するわけではありません。
しかし、病気になりやすいリスクを事前に知っておくことで、緑内障を含め高血圧や乳がんなど、早期発見・治療による進行予防や発病前治療が可能なものも少なくありません。
特に視力は生活に欠かせないものであり、失明原因第1位である緑内障のリスクを遺伝子検査で知ることにより、定期検査の推奨や早期発見・治療が可能ではないかと期待されています。
例えば、若者に発症する原発隅角緑内障は非常にまれであり、その多くが常染色体優性遺伝する染色体上のGLC1Aが緑内障関連遺伝子として特定されています。
(その他にも、GLC1B から BLC1N まで 13 の遺伝子が報告されています)
このような高リスク遺伝子以外の緑内障関連遺伝子も特定されており、そのような遺伝子が発現していても、必ずしも緑内障になるというわけではありません。
多くの場合、環境や生活習慣病などの他の病気が複雑に関与しあって発症します。
開放隅角緑内障にMYOC遺伝子の変異が関与
緑内障には、開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、続発緑内障など病態に応じて分類されていますが、今回取り上げるのは、アメリカのアイオワ大学眼科の研究対象となった、虹彩角膜角(隅角)という部分が閉塞していないのに眼圧が上昇する開放隅角緑内障についてです。
米国では原発性開放隅角緑内障が失明の2番目に多い原因であり、黒人においては1番です。
そのため、開放隅角緑内障のリスクファクターとして、黒人、眼圧上昇、開放隅角緑内障の家族歴、近視などが挙げられています。
開放隅角緑内障の家族歴ですが、開放隅角緑内障患者の眼圧上昇には、成人発症の4%、若年発症の10%において、MYOC遺伝子の変異が関係していることが報告されています。
アメリカのアイオワ大学が2012年に発表した研究では、眼圧上昇は、房水の過剰産生ではなく、MYOC変異による房水流出低下が原因であり、高眼圧により網膜で活性化されたグリア細胞がTNF—αを産生し、網膜の神経節細胞を徐々に障害し、結果的に乳頭陥凹は徐々に広く深くなり失明に至ると説明しています。
一部の遺伝子検査会社では、緑内障発症リスクを調べる検査として、唾液を用いたMYOC遺伝子変異検査を提供しており、一般の方も検査を受けることができます。
新事実 TMCO1遺伝子が原発開放隅角緑内障リスクに関与
2016年に掲載された米アイオワ大学眼科による新しい論文では、原発開放隅角緑内障発症に対するTMCO1遺伝子リスクについて検討しており、非ヒスパニック系の白人集団においては、TMCO1遺伝子型が、前記したような臨床的な予測因子と同程度に緑内障の発症に関与していることを示しました。
最後に
緑内障関連の原因遺伝子としては数十種類が特定されていますが、特定されていないものの方が多く、日本人を対象に研究されたデータが少ないため、これからも研究により新しい遺伝子が発見されるでしょう。
遺伝子検査は生命の選別のようで否定的に感じられる方もいるかもしれませんが、特に若年発症の緑内障では早期発見治療を行わないと失明に至ることもあります。
家族内で緑内障発症者が多い場合は、遺伝子検査を早期発見・治療の大切な機会と考え、家族で検査を受けることを検討しても良いかもしれません。
(参考資料)
Glaucoma Risk Alleles in the Ocular Hypertension Treatment Study.
Ophthalmology. 2016 Oct 1; pii: S0161-6420(16)31042-9.
Todd E Scheetz, Ben Faga, Lizette Ortega, Ben R Roos, Mae O Gordon, Michael A Kass, Kai Wang, John H Fingert
http://pmc.carenet.com/?pmid=27707548
DAL 緑内障MYOC遺伝子変異検査
https://www.dal-labo.jp/services/contract/myoc.html
https://www.dal-labo.jp/services/contract/contract9.html
原発性開放隅角緑内障(Review Article: Primary Open-Angle Glaucoma)
http://www.nishiizu.gr.jp/intro/conference/h21/conference-21_01.pdf
緑内障のリスクに関連する6つの遺伝子変異
http://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/9420
緑内障における視神経乳頭の脆弱性に関連する CDKN2B-AS1 上 のバリアントの同定について 京都府立医科大学 中野正和ら
https://www.kpu-m.ac.jp/doc/news/2012/files/press.pdf
ジェネシスヘルスケア株式会社 遺伝子ライブラリ
http://genesis-healthcare.jp/library/index.html
MY CODE 対立遺伝子(アレル)
https://mycode.jp/glossary/allele.html
当サイトを、正しく緑内障対策にご活用頂く為に。
当サイトでは、緑内障改善の可能性がある情報を、あえて非常に幅広く掲載しており、医学的治療の範囲を超え、予防・改善の可能性がある情報を発信しております。
これらの情報は、原因不明の眼病である緑内障に対して、効果を発揮する可能性があり、また、お医者様では立場上、提供しにくい範囲の情報であることから発信をしておりますが、これらを行えば、適切な治療等を行わずに済むというものではございません。
医学的治療の範囲を超えて、様々な情報を掲載している目的や、それらの情報を、皆さまの緑内障改善のために、正しくご活用いただくために、以下の記事を一度ご覧ください:
・ 緑内障に立ち向かうために、自分で出来る3つのこと
皆さまの緑内障対策の一助となれば幸いです。
ぜひご覧ください。
治療だけでは安心できない!?
無料メールで万全の緑内障対策を。
眼圧を下げるだけでは、今は、緑内障対策としては、不十分です。
なぜなら、眼圧を下げても進行するタイプの緑内障が急増しているからです(正常眼圧緑内障と呼ばれ、日本の緑内障患者の72%と言われます)。
眼圧下降を含め、様々な予防法として当サイトで公開されている内容を、無料で毎日メールでお届けします。
緑内障予防に役立つ内容を、メールで毎日一つ、受け取ることで、簡単に目に良いことを継続できます。
無料でご利用いただけますので、目に良い可能性があることを毎日行って、安心して毎日をお過ごしください。
ご解約もいつでも可能です。
詳しくはこちら