緑内障用語辞典
あ
悪性緑内障(あくせいりょくないしょう)
アドヒアランス
アミロイド緑内障(あみろいどりょくないしょう)
アルゴンレーザー
い
遺伝性の緑内障(いでんせいのりょくないしょう)
インプラント
お
か
外傷性緑内障(がいしょうせいりょくないしょう)
角膜(かくまく)
下直筋(かちょくきん)
眼圧(がんあつ)
眼圧検査と眼圧計(がんあつけんさとがんあつけい)
眼球マッサージ(がんきゅうまっさーじ)
眼底検査(がんていけんさ)
き
急性緑内障(きゅうせいりょくないしょう)
強膜(きょうまく)
く
隅角(ぐうかく)
隅角(鏡)検査(ぐうかくきょうけんさ)
隅角切開術(ぐうかくせっかいじゅつ)
隅角閉塞(ぐうかくへいそく)
隅角癒着剥離術(ぐうかくゆちゃくはくりじゅつ)
隅角癒着解離術(ぐうかくゆちゃくかいりじゅつ)
クロックチャート
け
血圧(けつあつ)
結膜(けつまく)
血流(けつりゅう)
原発開放隅角緑内障(げんぱつかいほうぐうかくりょくないしょう)
原発閉塞隅角緑内障(げんぱつへいそくぐうかくりょくないしょう)
こ
高眼圧症(こうがんあつしょう)
虹彩(こうさい)
後房(こうぼう)
混合型緑内障(こんごうがたりょくないしょう)
さ
し
色素緑内障(しきそりょくないしょう)
視神経(ししんけい)
視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)
視野狭窄(しやきょうさく)
視野検査(しやけんさ)
周辺虹彩切除術(しゅうへんこうさいせつじょじゅつ)
手術(しゅじゅつ)
シュレム管
硝子体(しょうしたい)
硝子体膜(しょうしたいまく)
上直筋(じょうちょくきん)
新生血管緑内障(しんせいけっかんりょくないしょう)
す
水晶体(すいしょうたい)
睡眠(すいみん)
ステロイド緑内障(すてろいどりょくないしょう)
せ
正常眼圧緑内障(せいじょうがんあつりょくないしょう)
繊維柱帯(せんいちゅうたい)
線維柱帯切開術(せんいちゅうたいせっかいじゅつ)
線維柱帯切除術(せんいちゅうたいせつじょじゅつ)
全層濾過手術(ぜんそうろかしゅじゅつ)
前房(ぜんぼう)
そ
た
第一選択薬(だいいちせんたくやく)
体質改善(たいしつかいぜん)
ち
て
と
瞳孔(どうこう)
東洋医学(とうよういがく)
トラベクレクトミー
トラベクロトミー
な
内眼手術既往眼への対策(ないがんしゅじゅつきおうがんへのたいさく)
難治性の緑内障(なんちせいりょくないしょう)
の
は
白内障(はくないしょう)
発達緑内障(はったつりょくないしょう)
ひ
光干渉断層計(ひかりかんしょうだんそうけい)
非穿孔性線維柱帯切除術(ひせんこうせいせんいちゅうたいせつじょじゅつ)
肥満(ひまん)
ふ
副作用(ふくさよう)
服薬遵守(ふくやくじゅんしゅ)
ぶどう膜炎続発緑内障(ぶどうまくえんぞくはつりょくないしょう)
プラトー虹彩(ぷらとーこうさい)
ほ
ま
み
も
網膜(もうまく)
毛様体(もうようたい)
毛様体小帯(もうようたいしょうたい)(チン小帯)
毛様体破壊術(もうようたいはかいじゅつ)
毛様体光凝固術(もうようたいひかりぎょうこじゅつ)
目標眼圧(もくひょうがんあつ)
問診(もんしん)
や
薬剤反応性(やくざいはんのうせい)
薬物治療(やくぶつちりょう)
ら
り
れ
ろ
あ行
悪性緑内障(あくせいりょくないしょう)
緑内障手術後に発症する、極度の浅前房と閉塞隅角による高眼圧のこと。眼圧は正常値から60mmHg台以上と幅広く、高眼圧でないからといって、悪性緑内障を否定することはできない。ほとんどは手術後に生じる。
アドヒアランス
治療(処方された薬)に対して、患者が指導を守る程度のこと。従来はコンプライアンス(服薬遵守)と呼ばれていたが、コンプライアンスには「命令を守る」というニュアンスがあり、アドヒアランスには患者が積極的に治療に参加するというニュアンスがあるため、より適切な言葉とされている。緑内障の治療は、長期にわたることが多く、自覚症状もないため、治療を成功させるには、アドヒアランスが重要である(アドヒアランス不良患者は、視野障害重症化の危険性が6倍以上になるという報告もある)。しかし実際は、点眼を忘れてしまうなど、緑内障治療薬に対するアドヒアランスは医者が考えるより、ずっと悪いと言われている。患者側も治療方法について積極的に理解し、治療方法の決定に関わり、自らきちんと実行することがとても大切である。また医師の側にも、点眼薬等の選択をアドヒアランスが得られやすいように選択したり、病気の状況や治療方法、副作用等について丁寧に説明すること等が求められる。
アミロイド緑内障(あみろいどりょくないしょう)
続発緑内障(他の病気等によって発症する緑内障)の一種。水晶体面上や瞳孔縁に白色のアミロイド沈着物が見られ、落屑症候群との区別が重要となる。代表的疾患として、家族性アミロイドポリニューロパチーがある。
アルゴンレーザー
現在、レーザー線維柱帯形成術はアルゴンレーザーを使用するもの(ALT)と、Nd-YAGレーザーを用いる選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)の2つが主流である。レーザー治療の種類については、レーザー治療の項目を参照のこと。
遺伝性の緑内障(いでんせいのりょくないしょう)
緑内障にも種類があり、非遺伝性の緑内障と遺伝性の緑内障がある。すべての緑内障が遺伝性の眼疾患ということではない。つまり、両親(親)が緑内障だから、その子も必ず緑内障になるかというと、そうではない(父母のどちらかや祖父や祖母が緑内障だから子供や孫が必ずなるわけではなく、兄弟、姉妹も同様)。
たとえば、先天性緑内障(生まれつき隅角に異常があるタイプ)や、続発先天性緑内障(リーガー症候群、マルファン症候群、スティックラー症候群、無虹彩症などの他の先天異常に合併しておこるもの。網膜剥離等の手術が原因のもの等を除く)などは、遺伝性があると考えられている。
その他の緑内障(原発開放隅角緑内障・正常眼圧緑内障や原発閉塞隅角緑内障(隅角が狭くなり(狭隅角)閉じてしまう)など)は、遺伝子疾患ではないけれど、遺伝的要因がある病気(多因子疾患:環境要因や遺伝的因子等が関係する)ということで、遺伝性要因は存在し、家族等に緑内障の方がいる場合は、そうでない人と比べて若干緑内障発症率のリスクが増すと考えられている。
また、原因遺伝子の一部は解明されているが、眼圧亢進(眼圧上昇)につながる仕組み等については、まだ研究が必要な段階である。ゲノム情報を活用した医療・最新治療・治療法等の実用化とあわせて、期待したいところである。
なお、現在明らかにされている原因遺伝子として、以下のようなものが挙げられる:
例えば、若者に発症する原発隅角緑内障は非常にまれであり、その多くが常染色体優性遺伝する染色体上のGLC1Aが緑内障関連遺伝子として特定されている(その他にも、GLC1B から BLC1N まで 13 の遺伝子が報告されている)
他にも、2016年に掲載された米アイオワ大学眼科による新しい論文では、原発開放隅角緑内障発症に対するTMCO1遺伝子リスクについて検討しており、非ヒスパニック系の白人集団においては、TMCO1遺伝子型が、臨床的な予測因子と同程度に緑内障の発症に関与していることを示した。
このような高リスク遺伝子以外の緑内障関連遺伝子も特定されており、そのような遺伝子が発現していても、必ずしも緑内障になるというわけではない。多くの場合、環境や生活習慣病などの他の病気が複雑に関与しあって発症する。
インプラント
緑内障に使用されるインプラントには、濾過手術に使用されるものや、シュレム管からの流出を促進するもの、毛様体上腔への流出を促進するもの等がある。このうち、管腔を持つチューブシャントのうち、プレートを持つものがロングチューブ、持たないものがミニチューブ(エクスプレス)と呼ばれる。ロングチューブの代表例として、バルベルト緑内障インプラント、アーメド緑内障インプラントなどが挙げられる。エクスプレス(エクスプレス緑内障フィルトレーションデバイス)は、強膜弁下から前房内に挿入し、房水を結膜下に導く。
黄斑・中心窩(おうはんちゅうしんか)
瞳孔から見たときに真正面にあり、視野の中心をみる働きをする。
か行
外傷性緑内障(がいしょうせいりょくないしょう)
外傷に起因する緑内障。非穿孔性眼外傷によるものと穿孔性眼外傷によるものとに区分できる。傷害やそれに伴う併発症によって、眼圧の異常をきたす可能性があり、低眼圧・高眼圧どちらの状態になることもある。
角膜(かくまく)
光の入り口である黒目の部分。強膜とつながっている。
下直筋(かちょくきん)
黒目を下側に動かす働きをする。
眼圧(がんあつ)
眼球の内部から外側に加えられている圧力のこと。この圧力によって眼球の丸い形や網膜の張りが保たれている。
眼球内には房水と呼ばれる液体が血液の代わりに流れ、各部に栄養を運んでおり、眼圧は、この流れる房水の量によって、一定に保たれる仕組みとなっている(眼圧調整)。
そのため、房水の流れが滞ったり、詰まったりして流れなくなると、循環眼球内の圧力が高まり眼圧が上昇する。
正常眼圧の平均値は、15.5(±2.6)mmHg前後、統計学的な正常眼圧の上限値は約21mmHgと言われている。ただし、これは欧米人を対象とした調査結果に基づいたもの。日本人を対象とした国内での大規模調査(いわゆる多治見スタディ)の結果では、右眼眼圧は14.6±2.7mmHg(平均値±標準偏差)、左眼眼圧は14.5±2.7mmHg(同)、となり、統計学的な正常眼圧の上限値は19.9~20.0mmHgである。
眼圧は、一日の中でも変動する(=日内変動)。一般的には、朝に高いことが多いと言われているが、個人によって異なる。また眼圧は、日によっても変動し(=日々変動)、季節によっても変動し(=季節変動)、一般的には、冬に高く、夏に低いと言われている。そのため、必要と判断された患者の眼圧を、たとえば週末に入院の上、連続2日間で日内変動を測定する病院もある。
眼圧に関係すると言われる要因には、様々あり、たとえば、年齢、性別、屈折、人種、体位、運動、血圧、眼瞼圧、眼球運動などが挙げられている。また薬も眼圧に影響を与える。
房水の循環機構に支障をきたす原因は、循環を終えた房水を外に排出している角膜と虹彩の境にある、前房隅角と呼ばれる部位に何らかの障害が生じるためと考えられている。その結果、十分な排出がなされなくなり、溢れた房水が眼球内に溜まって眼圧を押し上げる。
眼圧(健康な人の正常値で10-20mm/Hg)の上昇は、わずかであっても視神経には取り返しのつかないダメージを与えることがあり、油断は禁物。
視神経は約100万本あるが、その数は年齢とともに減少し、半分くらいになると視野検査で異常が見つかることとなる。眼圧が高くなると視神経の衰退が早まったり、あるいは網膜の奥で視神経が束になっている部分(視神経乳頭)が痛められたりして、神経が機能を失うことがある。徐々に視野が欠けたり、最悪の場合失明する危険もある。いったん失われた神経機能は二度と回復することがない。
眼圧検査と眼圧計(がんあつけんさとがんあつけい)
眼圧検査とは、眼圧を測定する検査のこと。使用される眼圧計には種類があり、目に触れるもの(接触型)と触れないもの(非接触型)に分類できる。測定値には、角膜の厚さや硬さの影響があると言われており、たとえば角膜が薄いと眼圧が低く、厚いと高く測定される。
非接触型眼圧計は測定が簡単というメリットがあるが、スクリーニング目的に限定して使用されるべきと考えられている。
現在の標準的眼圧系は、ゴールドマン圧平眼圧計。点眼麻酔をした後、青い光を使って目に機械を当てる装置である(接触型)。
この他、トノパン、パーキンスなどの眼圧計(座位でも仰臥位でも眼圧測定が可能なポータブルな眼圧計)や、アイケア手持眼圧計などがある。
ゴールドマン眼圧計等は、角膜厚や硬さが測定値に影響を与えるため、角膜厚の影響を受けにくい、デジタル眼圧計(DCT)も導入が進んでいる(測定値はやや高めになるようである)。
眼圧測定には誤差も指摘されており、たとえばゴールドマン圧平眼圧計では、測定の再現性に2mmHg程度の誤差が生じるとされている。
眼球マッサージ(がんきゅうまっさーじ)
トラベクレクトミー術後に、結膜や強膜弁下の癒着をはがす目的で行われる。術後中長期では意味はないとされる。
眼底検査(がんていけんさ)
眼底検査とは、視神経乳頭や網膜神経線維層に緑内障による変化が生じていないかを調べるための検査。視神経乳頭や網膜神経線維層の障害は、視野異常が発見されるより前に見つかることが多い。特に、日本人に非常に多い正常眼圧緑内障では、眼底検査によって視神経障害が発見されることで、正常眼圧緑内障と診断されるきっかけとなるため、非常に大切な検査である。
検査の前に散瞳薬を点眼して瞳孔を広げ、医師が検眼鏡で直接眼底を検査する(正常眼底か)。補助レンズを用いた細隙灯顕微鏡による検査や、眼底を写真撮影し観察したり、無赤色眼底観察や眼底三次元画像解析などの方法もある。
眼底検査で網膜の血管に異常がないか、そして視神経が正常かをチェックでき、網膜剥離・眼底出血・加齢性黄斑変性などが診断できる。
視神経乳頭陥凹の有無を確認し、網膜の神経線維層の欠損(NFLD)の有無を調べる(網膜神経線維層欠損は最も初期・早期に生じる緑内障性眼底変化といわれている)。
視神経乳頭陥凹を観察するには、三次元的に観察する立体的観察という方法が有効である。そのためには、細隙灯顕微鏡と補助レンズ(非接触型レンズやゴールドマン三面鏡など)を用いた方法が良いと言われている。
視神経乳頭に異常があって、緑内障が疑わしい場合には、改めて「視野検査」を行う。
急性緑内障(きゅうせいりょくないしょう)
眼圧が急激に上昇することで、緑内障の症状が出るもの。多くは「閉塞隅角緑内障」と呼ばれる病症で、房水の出口である隅角が閉じることで眼圧が急激に上昇するため、失明の危険性もある。眼圧は40~80 mmHgまで上がることが多い。視力の低下や、眼痛、頭痛、嘔吐などの自覚症状がある。虹彩の前方への突出、瞳孔の散大や結膜・毛様の充血などが起きている可能性がある。また、隅角鏡では、広い範囲での隅角の閉塞が確認でき、眼底では、乳頭浮腫や乳頭出血などが起きている場合もある。薬物による散瞳(散瞳点眼薬, 抗コリン薬内服など)や、暗所などが発作の原因となり得る。
発作が現れたときは、すぐに適切な処置を受けないと失明の危険性があるため、大至急、眼科を受診する必要がある。発作が起きたときや、発作の予防のために、レーザー治療:レーザー虹彩切開術(虹彩光凝固術)等を行う。
強膜(きょうまく)
眼球の一番外側の部分。白目を覆っている。
隅角(ぐうかく)
角膜と虹彩のあわさる部分。
隅角(鏡)検査(ぐうかくきょうけんさ)
隅角を観察し、主に隅角に房水が流れるだけの十分なスペースがあるかどうかを確認する。
緑内障の検査に必須のもので、他に、隅角の各部位(シュワルベ線、線維柱帯、強膜岬、毛様体帯など)に異常がないか観察する。
たとえば隅角に新生血管が発見された際など、糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症などが疑われる。他にも、線維柱帯にはっきりと色素沈着が見られる際は、落屑緑内障や色素緑内障などが疑われる。
隅角検査を行うことで、たとえば原発開放隅角緑内障(POAG)と思われていたものが、閉塞隅角緑内障と判明したり、結節などの所見から続発緑内障と判明することもある。
隅角鏡検査には、ケッペレンズ等を用いた直接型隅角鏡、または、ゴールドマン隅角鏡等に代表される間接型隅角鏡が使用される。
一般的には、静的隅角鏡検査と動的隅角鏡検査の両方が行われる。静的隅角鏡検査では自然散瞳状態での隅角を観察する。具体的には、細隙灯顕微鏡の光量を下げて、瞳孔領に光を入れず、また隅角鏡で眼球を圧迫しないようにして観察する。
動的隅角鏡検査は、通常、静的隅角鏡検査に続いて行われる。細隙灯顕微鏡の光量を上げて瞳孔を縮小させ、また、軽度の圧迫を加えて隅角を開大させて観察する。
隅角写真や眼底写真もあわせ、視神経乳頭所見を把握することが大切となる。
隅角切開術(ぐうかくせっかいじゅつ)
発達緑内障において行われる手術。隅角レンズで観察しながら、角膜から刺入した切開刀で前房側から隅角を切開する。
隅角閉塞(ぐうかくへいそく)
隅角が閉塞する仕組みには、いくつか存在する:
1.相対的瞳孔ブロック(relative pupillary block)
虹彩と水晶体間の房水の流出抵抗の上昇によって、虹彩の前方が膨隆することで、隅角が閉塞する。ほとんどの原発性の隅角閉塞に関与していると考えられている。
2.プラトー虹彩(plateau iris)
虹彩根部が前方に屈曲して、散瞳時に直接隅角を閉塞させる。虹彩の形態異常であり、定量的に定義することはできず、画像診断で判断する。
3.水晶体因子(lens factor)
水晶体の加齢等による増大も、原発性隅角閉塞発症の原因となり得る(そもそも瞳孔ブロックも水晶体と虹彩の間の房水流出抵抗の増大によるものであり、水晶体は関係している)
4.毛様体因子
急性発作において、見られるくらいで通常はあまりないが、毛様体も隅角閉塞に関与する可能性がある。
隅角癒着剥離術(ぐうかくゆちゃくはくりじゅつ)
原発閉塞隅角緑内障では、虹彩と水晶体がほぼ接触している。この状態だと房水が前房に流れ込めず、後房にたまる。すると房水が虹彩を圧迫して隅角が狭くなり、房水の排水路がふさがれてしまうので、通常はレーザーで虹彩に孔をあけ、後房にたまった房水をシュレム管から排出する。しかし、レーザー治療は隅角が完全に癒着してしまうと治療できない。完全に癒着してしまった場合は、癒着をはがすこの「隅角癒着剥離術」を行う(=虹彩が隅角に癒着している部分をはがす)。水晶体が前方に移動して隅角をふさいでいるときは、水晶体を摘出して眼内レンズを入れることもある。白内障手術との同時手術がより効果的と言われている。
隅角癒着解離術(ぐうかくゆちゃくかいりじゅつ)
閉塞隅角緑内障において、隅角癒着を解離して、生理的な房水流出路からの房水流出を促進して眼圧下降を得る手術。
クロックチャート
近畿大学医学部眼科学教室教授の松本長太氏により開発されたチャートで、自宅で簡単に視野が欠けていないかセルフチェックができる。緑内障の早期発見・早期治療のために、活用が望まれる。このクロックチャートは、ファイザー株式会社のサイトから無料でアクセス可能である:http://www.pfizer.co.jp/pfizer/healthcare/disease/eye_001.html
血圧(けつあつ)
血圧と眼圧は、基本的には関係ない。
血圧は、血管の中を流れる血液が血管を押す圧力の大きさ。血管が狭くなったり硬くなったりすることが原因で、高くなる(一方、眼圧は、眼球内の房水の圧力で、流れが滞ると圧力が高くなる)。
ただ、2016年に報告された研究では、高血圧を合併している原発性開放隅角緑内障(POAG)の患者において、日中に血圧が高く夜間に低下するdipper型の高血圧症では、眼動脈の血管抵抗が有意に上昇する(=眼血流に悪影響を及ぼす)可能性が示された。
結膜(けつまく)
眼球とまぶたを結ぶ役割をする。
血流(けつりゅう)
緑内障の原因は不明とされているが、東洋医学では血行不良が遠因であるという考え方がある。これによると、体のどんな部位でも、血液がスムーズに行かなくなると血行不良で「冷え」が起こり、その部位の機能が低下する。目でいえば、たとえば神経の血流障害から、近視性視神経障害(=緑内障)が起こり、黄斑部の血流障害から、黄斑部出血(=黄斑変性症)が、網膜脈絡膜の血流障害から、毛脈絡膜業委縮(=網膜剥離)、水晶体の代謝異常から、
白内障(=白内障)が起こるとされる。
医学的に現在証明されている唯一の緑内障治療は、眼圧下降であるが、眼圧以外の要因に関する新たな治療方法として、視神経乳頭の血流改善治療が注目され、期待されており、眼圧降下とは全く異なる、革新的な治療法となる可能性があるが、今のところ明確な治療効果は未知数とされている(科学的証明にはいたっていない)。しかし、証明を待つまで、患者としてやることができることとして、血流改善は挙げられるであろう。
原発開放隅角緑内障(げんぱつかいほうぐうかくりょくないしょう)
広義の原発開放隅角緑内障には、原発開放隅角緑内障と正常眼圧緑内障とを含む。
狭義の原発開放隅角緑内障(primary open angle glaucoma)は、広義の原発開放隅角緑内障のうち、眼圧が正常値以上のものを指す。
ただし、そもそも正常な眼圧値そして、眼圧に対する視神経の脆弱性には個体差があるため、特定の眼圧値によって厳密には分類することができず、臨床現場等では、便宜的に高眼圧群と正常眼圧群という形で区分されている。
(ちなみに、多治見スタディという大規模調査における眼圧分布によると、右眼眼圧は14.6±2.7mmHg(平均値±標準偏差)、左眼眼圧は 14.5±2.7 mmHg(同)であり、平均値±2標準偏差で正常眼圧を定義すると、正常上限は 19.9~20.0 mmHgということになり、この辺りで正常眼圧緑内障との区分がなされるようである)。
慢性進行性の視神経症で、視神経乳頭と網膜神経線維層に変化が現れる(たとえば、視神経乳頭辺縁部の菲薄化(うすくなる)や、網膜神経線維層が欠損するなどする)。
眼圧上昇が視神経症の発症に関与していることが強く疑われる(なお、角膜厚が厚いほど眼圧は高く評価される点に留意は必要)。
眼圧の値や房水動態の点などで、原発開放隅角緑内障と似ていても、視神経・視野障害につながらないものは、高眼圧症(ocular hypertension)とされる。高眼圧症から緑内障へ進行しやすい要因としては、緑内障の家族歴、血管因子、加齢や人種などが挙げられる。
原発開放隅角緑内障の治療としては、薬物治療が第1選択となる(まず最初に行う)。まずは、眼圧下降点眼薬を一種類のみ使用し、眼圧が下がらない場合には、他の薬に変更したり、多剤併用(配合点眼薬を含む)を行う。できれば、片眼にだけ点眼し、点眼していない目との眼圧を比較したり、治療前や治療時の眼圧の変動測定を行ったりすることで、治療効果を確認する。また、現在は、眼圧下降療法以外に視神経血流改善療法や神経保護治療も注目されているが、明確な治療効果は未知数(カルシウム拮抗薬内服の有効性を推定する報告もあるが)。
レーザー線維柱帯形成術(レーザーを当てて、線維柱帯の目詰まりをとる)も行われる。外来で点眼麻酔を行うことで実施できる点がメリット。ただし、眼圧下降効果は、時間の経過とともに低下し、術後10年経過すると、眼圧降下が維持されるのは1-3割程度となる。また、線維柱帯組織の障害によって、長期的に房水流出機能を低下させる恐れ(=眼圧上昇の恐れ)があるため、その後手術が行えない患者には安易に行わないように注意が必要である。さらに、眼圧が25mmHg超の患者にレーザー線維柱帯形成術を行っても、眼圧を正常値におさえることは難しいと言われている。
手術としては、以下が選択されることが多い:
・レーザーの効果ない場合(重度)
線維柱帯切除術:強膜と虹彩に孔をあけ、房水の排出口を作る。現在最も広く行われている手術。
・レーザーの効果ない場合(軽度)
房水流出路再建手術(線維柱帯切開術など):目詰まりした線維柱帯を切ることで房水を排出させる。
線維柱帯切開術は、眼圧降下効果が、線維柱帯切除術に比べて劣るが(10mmHg台後半)、線維柱帯切除術に比べて合併症が少ない点がメリット。
処置後の経過観察として、数ヶ月に一度は眼圧測定、視神経観察、また年に数回は視野測定を行う。眼底画像記録も有用である。
正常眼圧緑内障の治療についても、眼圧が正常値であっても進行するタイプの緑内障でさえも、目標眼圧として治療前の眼圧から20%の眼圧下降ができると、視野欠損の危険性が下がり、視野が維持できる可能性が高いと言われている。また、米国の研究で、30%以上の眼圧下降ができると、視野が維持できる可能性が高いという研究結果も出ている(眼圧下降が必ず30%以上である必要があるか否かは不明)。
治療と経過観察は、基本的に原発開放隅角緑内障と同じだが、レーザー線維柱帯形成術は眼圧下降効果が小さいと言われている。
原発閉塞隅角緑内障(げんぱつへいそくぐうかくりょくないしょう)
隅角閉塞によって眼圧が上昇して、緑内障性視神経症となるタイプ(primary angle closure glaucoma)。隅角の構造と緑内障性視神経症の有無によって、次のように分類される:
1.原発閉塞隅角症疑い(primary angle closure suspect:PACS)
原発性の隅角閉塞があるが、眼圧上昇や緑内障性視神経症などが生じていないものを指す。
2.原発閉塞隅角症(primary angle closure: PAC)
原発性の隅角閉塞があって、 眼圧は高いけれど、緑内障性視神経症は生じていないものを指す。
3.原発閉塞隅角緑内障(primary angle closure glaucoma:PACG)
原発性の隅角閉塞があって、緑内障性視神経症が生じているものを指す。
原発閉塞隅角緑内障の治療については、分類別に以下記載する:
・相対的瞳孔ブロック(relative pupillary block)による原発閉塞隅角緑内障・原発閉塞隅角症の治療:
まず行われるなのは、根本治療として、レーザー虹彩切開術、虹彩切除術による瞳孔ブロック解除となる。瞳孔ブロック解消後にも、高眼圧が見られる場合(残余緑内障)に、薬物治療も併用される。多くの場合、両眼でのブロックが考えられるため、片眼に原発閉塞隅角緑内障・原発閉塞隅角症がみられた場合は、他眼に対しても予防的なレーザー虹彩切開術や虹彩切除術が行われる。
・急性原発閉塞隅角緑内障・急性原発閉塞隅角症の治療:
点滴・内服・点眼:まずは眼圧を下げるための点滴・内服・点眼を行う。高度の眼圧上昇を沈静化させるのに最も有効な薬剤は、高張浸透圧薬。血液の浸透圧を高めて細胞内液の水分を細胞外液に移行させる作用を持つので、眼では主に硝子体液が脈絡膜毛細血管に引き込まれて、硝子体容積の減少によって眼圧が下がる。急性原発閉塞隅角緑内障・急性原発閉塞隅角症発作の際に有効だが、急激な細胞外液量の増加を伴うので、循環器系に負担がかかる。そのため、心不全や肺うっ血の症状を持つ患者の場合、肺水腫の危険性に注意が必要となる。また、高浸透圧薬の眼圧下降効果は一時的である。
レーザー虹彩切開術:レーザーで虹彩に孔(あな)をあけ、房水の通り道を作り、眼圧を下げる。原発閉塞隅角緑内障では、虹彩と水晶体がほぼ接触している。この状態だと房水が前房に流れ込めず、後房にたまることになる。すると、房水が虹彩を圧迫して隅角が狭くなり、房水の排水路がふさがれてしまう。そこでレーザーで虹彩に孔をあけ、後房にたまった房水をシュレム管から排出する。レーザー治療は隅角が完全に癒着してしまうと治療できないため、完全に癒着する前に発見し、タイミングを逃さずレーザー治療を受けることが大切となる。また、角膜が十分に透明である必要がある(不透明な角膜を通してのレーザー照射は水疱性角膜症発症の危険が高いため)。なお、急性緑内障発作は両目同時に起こることはまれだが、片側に起こるともう片方にも起こる危険が高いため、予防のためにもう片方にもレーザー治療を行うことが一般的である。
手術的虹彩切除術:レーザーが難しい場合、手術的虹彩切除術を行う。急性発作時には、悪性緑内障の発症や脈絡膜出血などの危険があるので、行う前に、十分眼圧を下げる必要がある。前に十分な眼圧下降を行う必要がある。
なお、切開の後も、点眼で治療することもある。
・慢性型原発閉塞隅角緑内障の治療法:
慢性型の場合も、急性型と同じく、まず瞳孔ブロックの解消が治療の基本となる。その後も眼圧が高い場合の治療は、原発開放隅角緑内障と同様に、薬物治療、レーザー療法、手術療法を行う。
点眼による薬物治療:原発開放隅角緑内障と同様に以下の薬物を組み合わせて使用する。
・プロスタグランジン関連薬
・β受容体遮断薬
・αβ受容体遮断薬
・α1受容体遮断薬
・副交感神経刺激薬
・炭酸脱水酵素阻害薬
・配合点眼薬
効果がなかったり発作が起きたときはレーザー治療や手術となる。
レーザー線維柱帯形成術:周辺虹彩前癒着のない部分で行うことができる。眼圧下降効果はあまり高くない。
房水流出路再建術(隅角癒着解離術, 線維柱帯切開術):レーザー治療は隅角が完全に癒着してしまうと治療できないため、完全に癒着してしまった場合は、癒着をはがす「隅角癒着剥離術」を行う。虹彩が隅角に癒着している部分をはがす。水晶体が前方に移動して隅角をふさいでいるときは、水晶体を摘出して眼内レンズを入れることもある。
線維柱帯切除術:薬物治療で眼圧が十分下がらない場合や、周辺虹彩前癒着が長期にわたる場合、隅角癒着解離術が難しい場合など、で行われる。
・原発閉塞隅角症疑い(PACS)の治療:
原発閉塞隅角症疑いは、必ずしも原発閉塞隅角緑内障を発症するとは限らないため、レーザー治療や手術を行うべきか意見が分かれる。たとえば、急性発作時にすぐ受診できない可能性があったり、家族歴等のリスクがある場合には一般的に手術が行われる。
・プラトー虹彩(plateau iris)によって閉塞している原発閉塞隅角緑内障・原発閉塞隅角症の治療:
虹彩根部が前方に屈曲して、散瞳時に直接隅角を閉塞させる。虹彩の形態異常であるため、定量的に定義することはできず、画像診断で判断する。
薬物治療:縮瞳によって、周辺部虹彩を中心に向かって引っ張り、隅角を開大させて、隅角閉塞の進行を予防する。周辺虹彩前癒着が広い範囲に及び、縮瞳剤のみでは、十分に眼圧を下げられない場合には、瞳孔ブロック解除後の慢性原発閉塞隅角緑内障と同じように、薬物治療によって、房水産生抑制や房水流出促進を目指す。
手術療法:
レーザー隅角形成術で虹彩根部と隅角との距離を広げることが可能だが、長期的な有効性は不明。
高眼圧症(こうがんあつしょう)
眼圧が高いけれど、視神経や視野に異常がない状態。高眼圧症から、原発開放隅角緑内障に移行する割合は非常に低いと言われている(1年に1~2%)。アメリカでの研究結果等からも、そのため、眼圧が正常値上限を僅かに超えているというだけでは、治療すべきという十分な理由とはならず、繰り返し眼圧20mmHg台後半となったり、緑内障家族歴などの危険因子がある際には治療を行うべきと考えられている。
視神経、視野検査が正常で、かつ原発開放隅角緑内障へ移行する危険因子のない場合は、1-2年おきの検査(眼圧、視神経、視野)を行う。
虹彩(こうさい)
伸びたり、縮んだりして瞳孔の幅を変える。
後房(こうぼう)
水晶体と虹彩の間の部分。
混合型緑内障(こんごうがたりょくないしょう)
原発開放隅角緑内障と原発閉塞隅角緑内障が組み合わさった形を、混合型緑内障と呼ぶ。治療については、まず瞳孔ブロックを解消し、その後原発開放隅角緑内障として治療を行う。
さ行
細隙灯顕微鏡検査(さいげきとうけんびきょうけんさ)
細隙灯顕微鏡検査とは、細隙灯顕微鏡という、細い隙間として焦点を絞って照らすことのできる強い光源の付いた機械を用いた検査のこと。緑内障診療の中で、基本的な検査となり、角結膜、前房、虹彩、水晶体などに加えて、補助レンズを用いて、隅角や眼底を観察する。
1. 角結膜
角膜浮腫がないか等、見る。急性緑内障発作で眼圧が急激に上昇した場合や、続発緑内障などで角膜浮腫が起こる。
2. 前房
閉塞隅角緑内障かどうかを簡易的に診断する。日本人は欧米人と比べ、浅前房であることが多く、バンヘリック法によって隅角の広さを推定する(角膜厚と周辺部前房深度の比較による推定方法)。ただ、プラトー虹彩緑内障では、前房深度がほぼ正常であっても狭隅角や隅角閉塞がみられるため、その診断のためには、細隙灯顕微鏡による検査だけでは足りず、隅角鏡検査が必要となる。
3. 虹彩
虹彩の状態を観察する。たとえば、虹彩が非常に前方へ膨隆している場合は、瞳孔ブロックの存在が疑われる。他に、虹彩と角膜または隅角線維柱帯との前癒着や、水晶体との後癒着、虹彩の血管新生、虹彩萎縮などがないか観察する。
4. 水晶体
水晶体の大きさや形状の異常(膨化水晶体、球状水晶体など)や、水晶体の位置異常(水晶体脱臼, 水晶体亜脱臼など)などがないか観察する。水晶体の位置異常や、白内障進行による水晶体厚増加などは、隅角閉塞の原因となり得る。白内障の種類によっては、水晶体物質の流出が伴われるため、水晶体融解緑内障と呼ばれる緑内障の併発が起こり得る。他には、水晶体前面を観察して、水晶体前面と虹彩に虹彩後癒着がないか観察したり(レーザー虹彩切開術や周辺虹彩切除術後に起こることがある)、水晶体前面や瞳孔縁などに白色物質の沈着がないか(落屑緑内障)観察する。
色素緑内障(しきそりょくないしょう)
虹彩が擦れて色素が散布する疾患。日本人には少ないとされる。
視神経(ししんけい)
網膜に伝わった光を映像として脳に送る。光はまず視細胞という組織に届くと、一種の化学反応が起こり、視細胞はパルス(電気信号)を発する。視細胞には2種類あり、明暗の度合いを感知する「桿体(かんたい)」と、色を識別する「錐体(すいたい)」とがある。それらの細胞が、光の明暗と色とをパルスに変え、視神経を通じて脳へ送られる。パルスは、神経線維が交差する視交叉という部位を経て、脳内の外側膝状体へと導かれる。さらに大脳の後頭葉の第一次視覚野に伝えられ、画像として認識される。
視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)
視神経の先端にあり、網膜からの映像はここを経由し、視神経に伝わる
視野狭窄(しやきょうさく)
網膜神経節細胞の消失によって、見える範囲が狭くなること。
緑内障による視野狭窄の進行は非常にゆっくりで、かつ、両目同時に進行することは滅多にないため、多くの場合、自覚症状はほとんどなく、治療が遅れ失明に至ることもある。なお、網膜神経節細胞が死滅することで起こるため、眼鏡で矯正することはできない。
不可逆的であり、現在の治療では回復させることができない。患者のQOL(quality of life)を大きく低下させる。
視野検査(しやけんさ)
視野検査は、一点を注視したときに周囲に見える範囲を自動視野計(ゴールドマン視野計・ハンフリー視野計等)を用いて測定する検査。正常な人は、片目につき上方に60度、下方に75度、鼻側に60度、耳側に100度という広い視野を持っている(横長の楕円形)。
視野検査には、動的計測と静的計測の2つがある。代表的な視野計としては、次のようなものがある:
・ゴールドマン視野計(標準的な視野計(動的計測))
・ハンフリー視野計(静的計測。中心30度以内の精密測定が主に行われる)
視野検査は各種検査の中で、患者にとって負担が大きい検査といわれる。
周辺虹彩切除術(しゅうへんこうさいせつじょじゅつ)
原発閉塞隅角緑内障など瞳孔ブロックが原因の緑内障において行われる手術。周辺部虹彩を切除することで、前後房の間の圧差を解消する。レーザー虹彩切開術が普及して、現在はあまり行われていない。
手術(しゅじゅつ)
手術には、次のようなものがある(詳しくは、各項目参照のこと)。薬物治療やレーザー治療によっても、十分な眼圧下降等の効果が得られない場合に行われる。
濾過手術
・全層濾過手術
・線維柱帯切除術
・非穿孔性線維柱帯切除術
・チューブシャント手術
房水流出路再建術
・線維柱帯切開術
・隅角癒着解離術
・隅角切開術
シュレム管
繊維柱帯から来た房水がここを通り、外側の血管へ排出される。
硝子体(しょうしたい)
透明のゼリー状のもので、眼球の形を保っている。角膜・前房・水晶体を通過してきた光が、網膜で像を結ぶときに通り抜ける部分であるため、透明。質的には水分をたっぷり含んだコラーゲンでできた組織。
硝子体膜(しょうしたいまく)
硝子体を覆っている膜。網膜を内側から支え、眼球の形を保っている。
上直筋(じょうちょくきん)
黒目を上側に動かす働きをする。
新生血管緑内障(しんせいけっかんりょくないしょう)
糖尿病網膜症、網膜中心静脈閉塞症、内頚動脈閉塞症などの眼内虚血に起因して発症する難治性緑内障。約97 %が網膜虚血を原因として発症する。隅角に新生血管が生じて、房水が流出できず、眼圧が上昇する。
以下、新生血管の生じるまでを、糖尿病網膜症を例に説明する。糖尿病網膜症は初期(単純型網膜症)から、中期(前増殖糖尿病網膜症)、重症(増殖糖尿病網膜症)に分けられている。まず、初期の単純型網膜症では、高血糖の状態が長期に及ぶと、血管壁が傷み、血管が細く硬くなり、血流が減少する。眼底にある網膜は細い血管(毛細血管)が豊富な組織であり、この血管が傷むと、血管の弱った部分が膨隆して毛細血管瘤となる。脳にできる動脈瘤と同じで、瘤が破綻すると網膜内で出血を起こす。中期になると、毛細血管が閉塞し、網膜が虚血に陥り酸素や栄養不足となる。この状態を打破するために、網膜組織はVEGT(血管内皮細胞増殖因子)と呼ばれるホルモンを放出し、新しい血管を生やし始める(この血管が「新生血管」)。
隅角という非常に狭いところに新生血管を生じる新生血管緑内障は難治性であり、抗VEGF治療が施行される前までは有効な治療法がほぼない状態であった。現在では、抗VEGF(血管内皮増殖因子)薬はこういった難治性緑内障を含め、新生血管が病気の増悪因子となる病気(主に悪性腫瘍)に活躍している。しかし、副作用として、加齢に伴い疾病率が増加する狭心症や心筋梗塞、脳卒中といった副作用が添付文章に挙げられており、使用上に不安があった。この点、2006年に抗VEGF療法が導入された米デューク大学で、滲出型黄斑変性患者に対する抗VEGF療法が、急性心筋梗塞、脳卒中および死亡率を増加させるかを調査するべく、5年間の追跡調査が行われており、研究では、抗VEGF療法が開始される前である2000年と2006年治療開始後で滲出型黄斑変性患者の心血管イベントおよび死亡率を比較し、その結果は、抗VEGF療法がいずれのリスクも増加させないことを示している。
水晶体(すいしょうたい)
目のレンズの部分。角膜からの光を屈折させて像を結ぶ。
睡眠(すいみん)
緑内障と睡眠の関係に関する研究として、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と緑内障に有意な関係が認められた海外の研究がある。OSASとは、睡眠中に気道が狭くなり無呼吸となる病気で、低酸素状態による弊害が問題視されている。低酸素を引き起こすOSASが緑内障のリスクを増大させることを示した研究として、中国・重慶医科大学附属第一医院の医師であるLiu氏らによる2016年のものがある。メカニズムに関してはまだ不明な点が多く、今後さらなる研究が必要とされているが、OSASを持つ緑内障患者にとって、OSASのコントロールの重要性が示されている。
ステロイド緑内障(すてろいどりょくないしょう)
ステロイド投与に起因して眼圧上昇をきたす続発緑内障の一つ。ステロイドが誘因となって、主経路の眼圧流出抵抗が上昇することによって生じる。ステロイドによる眼圧上昇反応には個人差があり、眼圧上昇をきたす群をステロイドレスポンダーと呼ぶ。
正常眼圧緑内障(せいじょうがんあつりょくないしょう)
広義の原発開放隅角緑内障のうち、眼圧が常に正常値であるものを、正常眼圧緑内障と呼ぶ(normal tension glaucoma, normal pressure glaucoma)。眼圧が正常だからといって、視神経症の発症に眼圧が無関係と言い切ることはできないが、循環障害など、眼圧以外の因子も関係すると考えられている。
また、眼圧は一日のうちや季節によっても変動するため、「常に」正常範囲である、と言い切るには、日内変動測定などが必要となる。
正常眼圧緑内障(または「低眼圧緑内障」)は、日本における緑内障患者の72%を占めると言われている。
(参考:日本における緑内障有病率 日本眼科学会より)
:正常眼圧緑内障:72%
:原発閉塞隅角緑内障:12%
:続発緑内障:10%
:原発開放隅角緑内障:6%
正常眼圧緑内障は、眼圧が正常値であっても進行する恐れがあるが、目標眼圧として治療前の眼圧から20%の眼圧下降ができると、視野欠損の危険性が下がり、視野が維持できる可能性が高いと言われている(目標眼圧の項目も参照のこと)。
原因は不明で、もともと視神経の抵抗力が弱く、正常眼圧でも傷ついてしまうのではないか、眼底部分の血液循環が悪いことが影響しているのではないか、強度の近視の人は網膜が薄く、その影響で視神経が傷つきやすいのでは、などの説がある。眼圧は低くとも、個性としてその人の正常眼圧を超えてしまったため病気として症状が出てしまう、と考えられている。
また、特に日本で正常眼圧緑内障が多い理由として、加齢とともに有病率が上がることがわかっているため、日本での高齢化もその一因と考えられる。また近視も緑内障の発症の危険因子であるため、日本人に近視が多いことも一因とされる。
繊維柱帯(せんいちゅうたい)
房水が通るフィルターの部分。
線維柱帯切開術(せんいちゅうたいせっかいじゅつ)
解放隅角緑内障や若年者などのケースで選択される手術の一つで、電気メスで線維柱帯の一部を切開、除去し、房水の流出を促して眼圧を下げる手術(別名:トラベクロトミー、房水流出路再建術の代表)。結膜と強膜をはがして、シュレム管から器具を入れて目詰まりしている線維柱帯を切開してから、再び結膜と強膜をかぶせて元に戻す。これで排水路が再開し、房水が流れるようになる。手術時間は15〜30分と短時間で、切除術より術後の合併症のリスクは少ないが、有効率は切除術よりも低くなり(眼圧を下げる効果も少なく)、正常眼圧緑内障ではあまり効果がないと言われている。眼圧が安定するまで眼球のマッサージを行ったり、縫合糸を切開するといったメンテナンスが必要で、個人差はあるが術後数年で効果が低下する。
線維柱帯切除術(せんいちゅうたいせつじょじゅつ)
線維柱帯を切除することによって、眼圧を上げる原因となっている房水(ぼうすい)という液体の流れを良くする手術(別名:トラベクレクトミー、濾過手術の代表)。原発開放隅角緑内障と正常眼圧緑内障で行われる。結膜を切って、その下の強膜を薄くはがして隅角に向かって孔をあける。はがした強膜と結膜をかぶせて縫い合わせ、房水の新しい排水路を作る。強膜フラップを作成し過剰濾過をコントロールする、分層濾過手術であり、以前に行われていた虹彩はめ込み術、管錐術、Scheie(シェイエ)手術等、強膜フラップを作成しない全濾過手術と区別される。現在、最も一般的な緑内障手術(線維柱帯房水が流れる通路を作成し、癒着防止のためにマイトマイシンCという薬剤を切開創に塗布するマイトマイシンC併用線維柱帯切開術は、日本で最も行われている緑内障の観血的手術)。切開術よりも眼圧低下が期待できる。
術後に房水の流れ具合を見て、縫合部位を再度広げるか、さらに縫合するかして排出量を調整し、眼圧をコントロールする。レーザー切糸術によって術後の眼圧調整が可能になったため、低眼圧などの過剰濾過による合併症も減少している。多くの場合、長期にわたって、眼圧をコントロールすることができる。排出された房水は周辺のリンパ組織から吸収される仕組み。
2015年に発表された広島大学の研究では、日本国内で線維柱帯切除術(および同時白内障手術)を受けた829例を対象に成功率やリスク因子、および術後合併症について解析しており、以下が判明している:
・ 眼圧は術前と比較し、術5年後には12〜13mmHgまで低下し、成功率はIOP<22mmHg群において術1年後では約9割、術5年後は約7割であったこと、
・ 切除術で効果不良の例では再手術が行われることがあるが、3回目以降は成功率が低下し、効果がみられなかったこと、
・ 手術が不成功となるリスクは、術前高眼圧、硝子体の状態(硝子体出血など)、白内障手術が関連していること
・ 術後合併症である術後前房出血、浅前眼、房水漏出、脈絡膜剥離に関しては、それぞれ2.7%、3.1%、1.9%、7.2%であったこと
上記の研究を総括すると、術5年後の成功率は約7割と高いものの、失明のリスクが高い術前高眼圧や過去複数の緑内障手術歴があること、術前硝子体状態が悪いこと、同時白内障手術が不成功のリスク因子となることがわかった
全層濾過手術(ぜんそうろかしゅじゅつ)
強膜弁を作製せず、前房から結膜下への直接的な房水流出路を作る。線維柱帯切除術などと比較して、濾過量のコントロールが困難だったり、浅前房などの合併症が多いため、一部のきわめて難治な症例に限って行われる。
前房(ぜんぼう)
水晶体と角膜の間の部分。
続発緑内障(ぞくはつりょくないしょう)
他の病気や薬などの長期使用で発症するもの。糖尿病網膜症やぶどう膜炎、白内障などが原因のものや、炎症を抑えるステロイド剤の長期使用が眼圧を上げることもある。
狭義の続発緑内障は、緑内障性視神経症(GON)が見られるもののみを指すが、他の病気が存在することで評価が困難な場合もあるため、続発性の眼圧上昇があるけれど緑内障性視神経症はないものも含まれることが一般的。
続発緑内障の分類方法にはいくつかあるが(病因による分類や治療法による分類など)、以下には、眼圧が上昇する仕組みによる分類につき記載する:
(なお、眼圧上昇の仕組みによる分類は、治療の観点から有用だが、病因が同じでも眼圧が上がる仕組みは異なる(変化する)ことがある点に留意が必要。続発緑内障の診断には、眼圧が上昇する仕組みを確認するため、隅角検査が必ず必要となる)
続発緑内障の治療は、まず原因となる疾患の治療を最初に行う。併発した緑内障の治療法は、眼圧が上がってしまった仕組みに応じてそれぞれ異なる。
1.続発開放隅角緑内障の眼圧が上昇する仕組み
1-1 線維柱帯と前房の間の房水流出抵抗によるもの
線維性血管膜や結膜上皮などによって、異常房水流出抵抗が発生して起こる。
原発開放隅角緑内障に準じて薬物治療を行う。ただ、副交感神経刺激薬は効かないことが多い。また、保険適用外となるが、血管新生緑内障に対して抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor: VEGF)薬の眼内投与の有効性が報告されている。手術療法としては、線維柱帯切除術を行う。レーザー線維柱帯形成術は効かず、むしろ有害とされている。
1-2 線維柱帯の房水流出抵抗によるもの
落屑物質や炎症性産物等によって、異常房水流出抵抗が発生して起こる。副腎皮質ステロイドの副作用によっても起こる。
ステロイド緑内障に対しては、副腎皮質ステロイド薬の中止や、眼圧下降薬を使用する。レーザー線維柱帯形成術や線維柱帯切開術・線維柱帯切除術が行われることもある。
落屑緑内障では、点眼治療やレーザー線維柱帯形成術(しばしば大きな眼圧下降につながります)、線維柱帯切除術・線維柱帯切開術が行われる。炎症性疾患による続発緑内障では、まず消炎療法、そして点眼療法、線維柱帯切除術などが行われる。
1-3 シュレム管後方の房水流出抵抗によるもの
上強膜静脈圧の亢進により起こる(眼窩内の圧上昇に伴うもの、上眼静脈圧亢進によるもの等がある)
まず、原疾患の治療を行い、その後、眼圧下降薬の点眼や手術等が行われる。
1-4 房水過分泌によるもの
2. 続発閉塞隅角緑内障の眼圧が上昇する仕組み
2-1 瞳孔ブロックによるもの
膨隆水晶体、水晶体脱臼、虹彩後癒着などが瞳孔ブロックの原因となって起こる。
瞳孔ブロックの原因によって、治療法を検討するが、一般には、眼圧下降薬の使用、レーザー虹彩切開術、水晶体摘出術・硝子体切除術、縮瞳薬の中止などが行われる。
2-2 水晶体の前方移動による直接閉塞
水晶体脱臼が原因で、瞳孔ブロックはなくとも、直接隅角が閉塞することがある
2-3 水晶体より後方に存在する組織の前方移動によるもの
硝子体前方移動、毛様体脈絡膜滲出などによって起こる。
縮瞳薬は毛様体前方突出を助長するため禁忌とされている。アトロピン点眼による瞳孔散大と毛様体弛緩や、高浸透圧薬の使用、眼圧下降薬の使用、レーザーや手術による前部硝子体膜切開術などが行われる。
2-4 前房深度に無関係に生じる周辺虹彩前癒着によるもの
血管新生緑内障、虹彩角膜内皮(ICE)症候群、ぶどう膜炎、手術、外傷などによって起こる。
薬物治療や、線維柱帯切除術などが行われる。血管新生緑内障ではレーザーあるいは冷凍法による網膜凝固を行う。
た行
第一選択薬(だいいちせんたくやく)
緑内障の第一選択薬としては、最も眼圧下降作用が期待されるプロスタグランジン関連薬が選択されることが多い。緊急性がなければ、片眼トライアルで薬剤の治療効果を判定することが望ましく、かつ、可能であれば日にちを変えて2回程度眼圧を測定するとよい。
体質改善(たいしつかいぜん)
緑内障の原因は現時点では不明であり、個人の体質とされる。そのため、特に急増する正常眼圧緑内障の患者を中心に、点眼薬治療等による眼圧下降だけでなく、体質改善や血流改善に取り組むことが発症・進行予防に効果が出る可能性がある。
チューブシャント手術
専用のインプラントを用いて前房と眼外の間に新たな房水流出路を作る。線維柱帯切除術が失敗した場合等に行われるが、日本では医療器具として最近その一部が認可されたばかりで、まだあまり使われていない。
治療(ちりょう)
今のところ、科学的証拠に基づいて、確実な緑内障治療といえるのは、眼圧を下げることだけであり、治療目的も多くの場合、眼圧上昇を抑え、あるいは眼圧下降を目指して、視神経を守ることにある。眼圧以外の要因に関する新たな治療方法として、視神経乳頭の血流改善治療や神経保護治療が注目され、期待されている。いずれも眼圧降下とは全く異なる、革新的な治療法となる可能性がある。もし、眼圧上昇の原因が特定できて、それが治療可能なものである際には、眼圧下降治療に加えて、原因に対する治療が行われる。たとえば、原発閉塞隅角緑内障等において瞳孔ブロックが眼圧上昇の原因である緑内障に対して虹彩切開を行うケースなどがこれに該当する。
緑内障治療の種類としては、薬物治療、レーザー治療、手術治療がある(詳細は各項目参照のこと)。これらから、症例や病期・病型に応じて適切な治療を選択することになる。通常は、まず薬物治療(点眼薬や服用薬、緊急時には点滴等)から治療を開始することになる。
点眼薬(てんがんやく)
緑内障の治療として、一般的に最初に行われるのが、点眼薬(目薬)による薬物療法である。緑内障治療薬として、現在多数の治療薬が認可されているが、必要最小限の薬剤と副作用で、最大の効果を得ることを目指す。なぜなら、複数の治療薬を併用するほど、副作用が増えたり、患者がきちんと全てを服用(点眼)しない等の問題が生じる可能性があるため。その点、複数薬剤を含む配合点眼薬が使用されることはよくあるが、まずは単剤を利用しながら、副作用や眼圧降下の効果を確認しながら、薬剤(点眼薬)を決定することが望ましいとされている。
また、薬物の効果には個人差があるため、点眼薬の導入に際しては、可能であれば、まず片眼に投与して、眼圧下降効果や副作用を判定して効果を確認してから(片眼トライアル)、両眼への投与を開始することが望ましいと言われている。
ちなみに、眼圧を十分下げるために、多くの治療薬が必要な場合(一般に3剤以上)、レーザー治療や手術等への移行の検討が必要となることが多い。
正しい点眼は、効果を高め、副作用を軽減する。次の点に注意して、点眼を行う:
・点眼前に手を洗う
・目薬の先が、まつ毛に触れないように注意する
・点眼は1回1滴(それ以上やっても効果は変わらず、流れ出てしまうこともある)
・点眼後、目を閉じて静かにしている
・目のまわりに目薬があふれた場合は拭き取る(手に付いた場合は、洗い流す)
・別の目薬をさす際は、5分以上の間隔をあける
点眼薬(目薬)は、大きく次の2つに分類される:
1.房水の産生を抑える作用がある点眼薬(目薬)。
チモロール(チモプトール)、
カルテオロール(ミケラン)、
レボブノロール(ミロル)、
ベタキソロール(ベトプティック)
ドルゾラミド(トルソプト)、
ブリンゾラミド(エイゾプト)
ジピベフリン(ピバレフリン)
ニプラジロール(ハイパジール、ニプラノール)
アプラクロニジン(アイオピジンUD)、
ブリモニジン(アイファガン)
ラタノプロスト+チモノール(ザラカム)、
トラボプロスト+トモロール(デュオトラバ)
チモロール+ドルザラミド(コソプト)
2.房水の排出を促す作用がある点眼薬(目薬)。
ラタノプロスト(キサラタン)、
トラボプロスト(トラバタンズ)、
タフルプロスト(タプロス)、
ビマトプロスト(ルミガン)、
ウノプロストン(レスキュラ
ブナジソン(デタントール)
ピロカルピン(サンピロ)
ニプラジロール(ハイパジール、
ニプラノール)
アプラクロニジン(アイオピジンUD)、
ブリモニジン(アイファガン)
ラタノプロスト+チモノール(ザラカム)、
トラボプロスト+トモロール(デュオトラバ)
また、緑内障治療薬は次のように分類される:
1.交感神経刺激薬
1-1.受容体非選択性
1-2.α2受容体選択性
2. 交感神経遮断薬
2-1.β受容体遮断薬
2-1-1.受容体非選択性
2-1-2.β1受容体選択性
2-2.αβ受容体遮断薬
2-3.α1受容体遮断薬
3.副交感神経刺激薬
4.プロスタグランジン関連薬
5.炭酸脱水酵素阻害薬
5-1.全身薬
5-2.局所薬
6.高張浸透圧薬
7.配合点眼薬
以上の分類を簡単に補足すると、交感神経のβ受容体を刺激すると心拍数が増加し、眼球の房室に流入する房水の量が増える(=房水の量が増えるので、眼圧を上昇しやすくなる)。そこで、β受容体を遮断することで房室に流入する房水量が減り、眼圧の上昇を抑えることができる。
また、α受容体を刺激すると、血圧の上昇とともに房室から排出される房水の量が増える。
原発開放隅角緑内障では、プロスタグランジン関連薬や交感神経β遮断薬の眼圧下降効果が優れているため、第一選択薬として使用される(ルミガンやチモプトール等)。
副作用等によって、不適当な状況もあり、そうした場合は、炭酸脱水酵素阻害薬点眼、交感神経α1遮断薬、非選択性交感神経刺激薬、副交感神経刺激薬なども第一選択薬になり得る。
なお、米国・ジョンズホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学部のTianjing Li氏らが、原発開放隅角緑内障に対する第1選択薬の効果について、その有効性を比較検討し、相対的な順位を明らかにする目的で解析を行っており、その結果、以下の点眼薬の有効性が高いことが報告されている(カッコ内は商品名):ビマトプロスト(ルミガン)、ラタノプロスト(キサラタン)、トラボプロスト(トラバタンズ)
瞳孔(どうこう)
黒目の中心部分。大きくしたり小さくして、光の入る量を調整する。
東洋医学(とうよういがく)
アジア発祥の医学全体のことを東洋医学と呼ぶが、特に中国において発展した医療を指すことが多い。緑内障については、「腎の気」と「肝の気」の滞りと見なす。
自然界にあるものを木・火・土・金・水に分けて考える五行論においては、目の関する症状に、もっとも関連するのが「木」、五臓で言うと「肝」、さらに表裏関係にある「胆」が挙げられる。過度なストレスを受けて目を酷使することで、炎のように上に熱が上がることで目が充血したり眼圧が高くなることが起きると考えられている。さらに、「木」の隣に位置している「水」、五臓で言うと「腎」にも関わりがあるとされ、過労や加齢、足腰の衰えによりエネルギーが不足してしまい、隣にある「木」の働きをジリジリと弱めてしまうと考えられている。これらのことから、東洋医学において目の症状はストレス、加齢と大きく関わると古くから考えられており、東洋医学的な養生では主に、「肝」「胆」「腎」に行われることが多い。
トラベクレクトミー
線維柱帯切除術のこと。詳しくは、線維柱帯切除術の項目を参照のこと。線維柱帯を切除することによって、眼圧を上げる原因となっている房水(ぼうすい)という液体の流れを良くする手術で、濾過手術の代表。
トラベクロトミー
線維柱帯切開術のこと。詳しくは、線維柱帯切開術の項目を参照のこと。解放隅角緑内障や若年者などのケースで選択される手術の一つで、電気メスで線維柱帯の一部を切開、除去し、房水の流出を促して眼圧を下げる手術で、房水流出路再建術の代表。
な行
内眼手術既往眼への対策(ないがんしゅじゅつきおうがんへのたいさく)
緑内障・白内障・硝子体手術等を内眼手術と呼ぶが、特に高齢者においては、緑内障以外の内眼手術を過去に行っている場合が少なからずあり、とりわけ線維柱帯切除術施行時や術後に影響を影響を及ぼす要因となるため、対策の必要がある。
難治性の緑内障(なんちせいりょくないしょう)
難治例としては、上記、内眼手術既往眼への対策をはじめ、血管新生緑内障、ぶどう膜炎続発緑内障、アミロイド緑内障、小児緑内障などが挙げられる。
嚢性緑内障(のうせいりょくないしょう)
落屑緑内障の以前の呼称。詳しくは落屑緑内障の項目を参照のこと。
は行
白内障(はくないしょう)
白内障も緑内障と同じく40歳頃から徐々に増えてくる眼病(目の病気)で、眼のレンズである水晶体が濁る病気。
発達緑内障(はったつりょくないしょう)
生まれつき隅角に異常があるタイプの緑内障で、子供にみられる先天的なもの。生まれつき隅角に発達異常があり、起こる。
異常の程度によって、発症時期が遅れる遅発型と早発型などに分類される(生後1歳までに発症するものが「早発型発達緑内障」、隅角の異常が軽度で10-20歳代になって発症するものが「遅発型発達緑内障」、他の先天異常を伴う発達緑内障の3つに分類)。
隅角だけでなく、虹彩発育異常による軽度の低形成などを合併することもある。また、いわゆる牛眼と呼ばれていた角膜径増大や角膜混濁などの病態となることも多くある。他には、他の先天異常を伴う緑内障として、無虹彩症、スタージ・ウェーバー症候群、ペータース異常、神経線維腫などに伴う発達緑内障がある。
早発型発達緑内障の治療法:
手術(線維柱帯切開術、隅角切開術)を、眼圧が下がるまで繰り返す。早発型発達緑内障治療は、原因が隅角の発育異常であることから、手術によって解決できるため、第1選択は手術療法となる。薬物治療は手術療法後の補助的な手段として行われる。手術療法には、以下のようなものがある:
・隅角切開術
角膜が透明な際に行われる。1回で90~120度の切開が可能で、3回までは手術の効果があることが多い。
・線維柱帯切開術
角膜が透明でない場合等に行われる。手術の際に、結膜弁・強膜弁を作製する必要があり、豊富な手術経験を必要となる。
・濾過手術
隅角切開術や線維柱帯切開術で効果が得られない場合、行われる。
前述の通り、薬物治療は補助的に行われる。その際は、原発開放隅角緑内障と同様に、薬物を組み合わせて使用するケースが多い。ただ、対象が子供であるため、体重に対して投与量が多くなることから、できるだけ濃度の低い薬剤から使用するべき点に注意が必要となる。
また、その後は、
・定期検査(生涯通う必要がある)
・弱視治療(健眼遮閉(しゃへい)*)
・眼鏡の装用
などを行う。
遅発型発達緑内障の治療法:
原発開放隅角緑内障の治療と同様に、薬物治療を行い、眼圧が下がらなければ手術する。隅角形成異常や著しい高眼圧など早発型発達緑内障と似ている部分も多く、同種の治療が行われることもある。
その後は、
・定期検査(生涯通う必要がある)
・弱視治療(健眼遮閉(しゃへい)*)
・眼鏡の装用
などを行う。
* 健眼遮閉(しゃへい):健康な目をあえてアイパッチで隠し、視力の悪い方の目を使うことでみる力を養う。
他の先天異常を伴う発達緑内障の治療:
発症確率はよくわからず、また、発症時期も幅広いため、そして眼圧上昇の仕組みも異なりますので、治療法は様々となる。基本的には、乳幼児期に発症した場合は、早発型発達緑内障と同様に、手術療法から始め、小児期以降の発症では薬物治療から始める。
光干渉断層計(ひかりかんしょうだんそうけい)
光干渉断層計(OCT)は、眼底にある網膜の断層画像を撮影する機械で、眼底写真より情報量の多い、CTやMRIに匹敵する。緑内障では、眼圧が正常範囲内である正常眼圧緑内障も含め網膜視神経繊維層が薄くなるという特徴がある。そこで、OCTで得られた網膜視神経繊維層の断層画像を正常の人と比べてどのくらい薄いかを解析し、さらに視野検査など他の検査と合わせて総合判断することで、緑内障診断の診断精度を高めることが可能となった。
OCTを用いれば、視野検査や視野欠損の自覚症状が出現する前に、緑内障による網膜視神経繊維層の欠損を捉えることができるため、失明回避に向けた早期発見・治療が可能となると考えられている。
さらに、光干渉断層計血管造影(OCT-A)は、まだ臨床現場では一般的ではないが、OCT撮影の際に造影剤を用いて、網膜にある微小血管を評価する目的の器械である。
2016年10月に掲載された米カリフォルニア大学による研究では、OCT-Aの技術を用いて、網膜の微小血管を評価し、網膜血管密度の減少が、原発開放隅角緑内障における視野障害の重症度に、構造異常にかかわらず有意に関連していることを明らかにされている。研究では、血管密度測定が視野欠損の重症度に関連しているかを評価するため、健常者31名と緑内障疑い48例および緑内障患者74例の合計153例を対象に、OCT-Aを含めた複数の検査データを解析し、結果は、血管密度は正常眼が最も高く、続いて、緑内障疑い、軽度緑内障、中等度〜重度緑内障の順となった。この研究では、血管密度減少と視野障害に相関関係があることが示されたが、両者の因果関係はまだ明らかではないため、今後も疾患の病態生理と緑内障における血管系の役割について研究が進められる予定である。
非穿孔性線維柱帯切除術(ひせんこうせいせんいちゅうたいせつじょじゅつ)
強膜弁下に一部の組織を切除して、前房に穿孔しない房水流出路を作る。線維柱帯切除術と比べて、合併症は少ないが、眼圧下降効果はそこまで高くない。
肥満(ひまん)
「肥満が眼圧を上昇させるリスク因子である」ことを示した論文が2016年に発表されている。イスラエル・デルアビブ大学の研究者グループは、男性および女性のBMI値と眼圧との関係を評価するために、約2万件のデータを後ろ向きに解析した。その結果、男女両者において、肥満が眼圧を上昇させる独立した因子であることが報告された。研究では、BMI値を25未満、25〜29.9未満、30〜35未満、35以上の群に分けて検討しており、25未満では平均眼圧が12.8mmHgであるのに対して35以上では14.3mmHgと、BMI値が上昇するに従い眼圧が有意に増加する結果となった。
副作用(ふくさよう)
緑内障治療では、点眼を長期間行うケースが多く、副作用が生じる頻度も高い。とくにβ遮断薬は全身的副作用が生じる可能性があるため、心疾患や喘息等の既往を把握する必要がある。結膜充血や角膜上皮びらん等では許容範囲内では治療を続けることも多いが、状態がひどくなった際には使用の中止や、保護薬との併用等も検討される。防腐剤による角膜上皮障害が生じた際には、防腐剤を含まない点眼薬に変更する等も考えられる。
服薬遵守(ふくやくじゅんしゅ)
コンプライアンスのことで、処方された薬剤・治療を、患者が指導を守ること。ただ、「命令を守る」というニュアンスが含まれ、現在はアドヒアランスがより適切な用語とされている。詳細はアドヒアランスの項目を参照のこと。
ぶどう膜炎続発緑内障(ぶどうまくえんぞくはつりょくないしょう)
ぶどう膜炎に伴う炎症、虹彩癒着、毛様体前方回旋などの要因によって生じる、続発緑内障の代表的な病型の一つ。
プラトー虹彩(ぷらとーこうさい)
前方回旋した毛様体が虹彩根部を押し上げ、隅角が狭小化している状態。これによって眼圧が上昇する等、緑内障性変化を伴うものをプラトー虹彩緑内障と呼ぶ。
房水(ぼうすい)
眼球内に流れる液体で、血液の代わりに各部に栄養を運んだり、老廃物を排出する。毛様体で作られ、房水の組成成分は血液の血清と似ている。眼圧は、この流れる房水の量によって、一定に保たれる仕組みとなっており、
房水の流れが滞ったり、詰まったりして流れなくなると、循環眼球内の圧力が高まり眼圧が上昇する。
ま行
慢性型緑内障(まんせいがたりょくないしょう)
隅角の閉塞が徐々に起きる緑内障。眼圧上昇は緩やか。多くは、「開放隅角緑内障」と呼ばれる病症。また、原発閉塞隅角緑内障の多くは、慢性型。眼圧が高いとは必ずしも限らず、隅角検査において原発性の隅角閉塞に伴う器質的隅角閉塞(周辺虹彩前癒着)を伴うものと伴わない(非器質的隅角閉塞)ものがある。原発開放隅角緑内障と区別するためには、隅角鏡検査が必要となる。
脈絡膜(みゃくらくまく)
網膜の機能を裏側から助けている。暗室を作るためにこの膜はメラニン色素をたくさん含んでおり、毛細血管も発達して血流も盛んで、網膜に酸素や栄養を送っている。
網膜(もうまく)
瞳孔から入ってきた光が伝わる。カメラでいうと、フィルム。10層からなる細胞群からできている。
毛様体(もうようたい)
ゆるんだり、緊張したりして、水晶体の厚みを変える。
毛様体小帯(もうようたいしょうたい)(チン小帯)
毛様体の動きにあわせて水晶体の厚みを調整する。
毛様体破壊術(もうようたいはかいじゅつ)
毛様体を凝固して、房水産生能を抑制することで眼圧を下降させる。レーザー装置の普及以来、あまり行われていない。また、疼痛が強く眼球癆など合併症が多いため、眼圧下降の最終手段とされている。
毛様体光凝固術(もうようたいひかりぎょうこじゅつ)
レーザー治療の項目を参照のこと
目標眼圧(もくひょうがんあつ)
緑内障治療において設定される、視神経障害の進行を阻止しうると考えられる眼圧レベル。ただし、「視神経障害の進行を阻止しうる眼圧」は個々人の状況によって異なるため、前もって正確に知ることは困難である。そこで、治療を開始する前の眼圧(ベースラインデータと呼ぶ)や、年齢、視野障害の進行状況や、家族歴、他眼の状況などから設定する。
一般的な傾向として、緑内障は後期になればなるほど、視野障害が進行しやすいため、目標眼圧は低く設定される。たとえば、緑内障初期には、目標眼圧19mmHg以下、中期には、16 mmHg以下、後期には14 mmHg 以下、というように設定する。
また、治療開始前の眼圧が低いほど、目標眼圧は低く設定する必要がある。治療前の眼圧から30%、最低でも20%の眼圧下降ができると視野が維持できる可能性が高いと言われている。しかし、ベースラインが40mmHgの患者に対して、50%の眼圧下降を行っても20mmHgと、緑内障進行を遅らせるには十分とはいえず、個別患者ごとに設定を行う必要がある。
目標眼圧を設定しても、それが正しかったかどうかは、実際に視神経障害を阻止できたかで判断する。そのため、たとえば、視神経障害や視野障害に進行があった場合は、さらに低い目標眼圧を設定する必要が出てくる。逆に、長期間、進行していない場合には、目標眼圧が妥当かどうか再検討することもある。目的はあくまで視神経障害の阻止にあるので、目標眼圧にばかりこだわらないことが大切とされている。
問診(もんしん)
緑内障の診療において、問診は非常に重要で、緑内障の診断や、治療の方針を決める際に、必要不可欠と言える。他の病気や薬などの長期使用で発症する続発緑内障の可能性を見極めるために、目の傷や手術歴や既往歴だけでなく、全身の他の疾患の既往歴・薬物治療歴について聞かれる。また、家族歴、特に緑内障の家族歴がある場合には、家族・血縁者の視機能障害を詳しく聞かれる。もし他の病院にて診断等を行っている場合には、それらの活用のために、詳しく聞かれることが多い。
患者の自覚症状によっては(眼痛や頭痛の強さなど)、急性緑内障の発作である可能性もあるため、自覚症状についても次のような点につき、聞かれる:
1.眼痛
通常、眼圧が急激に上昇した場合、強い眼痛が起こる。急性緑内障を疑い、眼痛の有無は聞かれることが多い。
2. 頭痛
急性緑内障の発作では、嘔吐を伴った頭痛がみられる。
3. 霧視(目のかすみ)
眼圧上昇に伴う角膜浮腫やぶどう膜炎による続発緑内障などで、 霧視が見られる。
4. 視野欠損
通常、緑内障の初期で、視野欠損・視野異常が自覚できることは少なく、もし自覚症状として視野欠損がある場合、視神経障害あるいは視野障害が既に相当進行している可能性が高い。
5. 充血
充血は、急性緑内障発作、ぶどう膜炎による緑内障、血管新生緑内障、水晶体融解緑内障などの続発緑内障において自覚症状として起こる。
患者側からは、問診でよく聞かれそうな事項も含め、次のようなことを伝える:
・いつからどんな症状がある?(例:2週間前から目がかすむ)
・眼痛・痛みはある?(例:目の奥がずきずき痛む、頭痛がする)
・目の症状以外に症状はある?(例:吐き気がする、肩こりがひとぢ)
・症状が出る前の視力は?(例:裸眼:右0.5 左0.6 矯正時:右1.0 左1.0)
・ほかの病気はある?その経緯も(例:5年前に糖尿病。飲み薬で治療中)
・服用している薬はある?あれば、なんという薬?(例:プレドニン(ぜんそくで))
・薬のアレルギーはある?(例:クラビットの使用でかゆみが出る)
・これまでに目の病気・怪我をしたことはある?(例:白内障になったことがある)
・家族で目の病気にかかった人はいる?(例:父が緑内障)
・たばこは吸う?(例:1日何本)
・その他、気になること、伝えておきたいこと、質問したいこと等
や行
薬剤反応性(やくざいはんのうせい)
緑内障治療薬の効果判定には難しさがある。患者が適切に点眼を継続しているか(アドヒアランス)の問題や眼圧変動の問題もあるが、薬剤反応性の変動の可能性も考えられる。そのため、短期間(点眼前後1回程度の眼圧測定)では、その治療薬の効果の有無を断定することはできない。
薬物治療(やくぶつちりょう)
緑内障治療薬として、現在多数の治療薬が認可されているが、必要最小限の薬剤と副作用で、最大の効果を得ることを目指す。なぜなら、複数の治療薬を併用するほど、副作用が増えたり、患者がきちんと全てを服用(点眼)しない等の問題が生じる可能性があるため。
その点、複数薬剤を含む配合点眼薬が使用されることはよくあるが、まずは単剤を利用しながら、副作用や眼圧降下の効果を確認しながら、薬剤(点眼薬)を決定することが望ましいとされている。また、薬物の効果には個人差があるため、点眼薬の導入に際しては、可能であれば、まず片眼に投与して、眼圧下降効果や副作用を判定して効果を確認してから(片眼トライアル)、両眼への投与を開始することが望ましいと言われている。両目それぞれの様子が(右眼と左眼とで)症状や進行の程度・状態が異なる場合があるため、左眼と右眼とで点眼薬の種類や頻度が異なる場合もある。
ちなみに、眼圧を十分下げるために、多くの治療薬が必要な場合(一般に3剤以上)、レーザー治療や手術等への移行の検討が必要となることが多い。
点眼薬には、大きく二つの作用がある:
1.瞳孔を縮める作用、
瞳孔が開くと房水の出口である前房隅角が圧迫されて房水が外に出づらくなるため、そこで、瞳孔を縮めることで出口を広げ、房水が外に流出しやすくする(例:トルソプト点眼液など)。
2.房水の分泌を抑える作用
余分な房水を作り出さないように毛様体に働きかける(例:トラバタンズ点眼液など)。
緑内障の飲み薬には、大きく二つの作用がある:
1.房水の分泌を抑える作用:
余分な房水を作り出さないように毛様体に働きかける。
2.血液の浸透圧を高める作用:
血液の浸透圧を高めると、房水は吸い取られて外へ流出しやすくなる(塩水の例でいうと、膜を隔てて、濃い塩水と薄い塩水が隣り合うと、薄い塩水は濃い塩水の方へ吸い取られていくのと同じ作用)
ら行
落屑緑内障(らくせつりょくないしょう)
毛様小帯、水晶体嚢、眼孔縁などに白色沈着物として見られる落屑物を有する疾患に伴う緑内障のこと。
緑内障(りょくないしょう)
眼球の中の圧力(眼圧)が上がり、そのために視神経に障害が起きる病気。本態は、進行性の網膜神経節細胞の消失と視野異常(緑内障性視神経症)で、視野狭窄(見える範囲が狭くなる)を起こしたり、失明したりする。
平成16年の国内の大規模調査によると、40歳以上では5.78%の人に症状がみられる。
基本的には進行性で、 非可逆的と考えられている(=失われた視野は戻らない)。
網膜神経節細胞の消失はゆっくり進行し、かつ、両目同時に進行することは滅多にないため、自覚症状を伴わないことが多く、治療の遅れにつながりやすいこともあり、緑内障は失明原因の1位の目の病気となっている。
(失明の原因としては、1990年の調査では、糖尿病性網膜症についで2番目に多く、その後、2002, 2007年の調査では、緑内障は、中途失明のトップ原因といわれている)
そのため、早期発見・治療による、障害の進行の阻止・抑制が重要となる
レーザー治療(れーざーちりょう)
手術が切開・切除するのに対して、レーザーは虹彩や隅角を焼いて穴をあける。手術と比較すると効果はやや劣るが、眼球を切らずに治療できる利点がある。主なレーザー治療は以下の通り:
・レーザー線維柱帯形成術:
目詰まりしている線維柱帯にレーザーを当て、房水の流れを改善する(房水流出率を改善)。具体的には、線維柱帯にレーザー光を照射して、フィルター部分の目詰まりを解消する。照射時間は5分ほど。日帰りで受けることができる。レーザー光が当たると、その熱によって線維柱帯が収縮するため、網目が広がり、これによって目詰まりが解消し、房水が流れるようになる。
また、レーザーの出力を弱めて照射すると、白血球中のマクロファージを活性化させることができる。マクロファージには異物を排除する働きがあり、線維柱帯にたまった老廃物の掃除をしてくれることが期待できる(ただし、効果が現れるまで3ヵ月ほどかかる)。
眼圧が25mmHg以上の例では眼圧を正常にするのは難しい。そのため、手術の代わりというよりは、薬物治療の補助的な治療法と考えられている。また、時間の経過とともに、眼圧下降効果は弱まる。
線維柱帯にレーザーを照射すると熱によって萎縮するため、以前は一度しか行えなかったが、最近では波長の短い、低エネルギーのレーザーを使う方法が主流となり、周辺組織へのダメージが少なく、繰り返し行うことができるようになった。
レーザー線維柱帯形成術には、以下の合併症がある:
・前房出血
・周辺虹彩前癒着
・術後虹彩炎
・術後眼圧上昇
原発開放隅角緑内障に対して行われることが多い。正常眼圧緑内障でも行われるが、効果が得られないことも多く、その場合は薬物療法(点眼等)を継続する。
・レーザー隅角形成術 (レーザー周辺部虹彩形成術):
房水の通り道が虹彩で塞がっている時にこれを再開通させる。隅角癒着解離術という手術後の仕上げや、虹彩の形が特殊な場合に行うことがある。
レーザー隅角形成術には、以下の合併症がある:
・術後一過性眼圧上昇
・術後虹彩炎
・瞳孔偏位
・レーザー虹彩切開術:
原発閉塞隅角緑内障では、虹彩と水晶体がほぼ接触しており、この状態だと房水が前房に流れ込めず、後房にたまる。すると房水が虹彩を圧迫して隅角が狭くなり、房水の排水路がふさがれてしまう。そこでレーザーで虹彩に孔をあけ、後房にたまった房水をシュレム管から排出する(レーザー虹彩切開術)。
なお、急性緑内障発作は両目同時に起こることはまれだが、片側に起こるともう片方にも起こる危険が高く、予防のためにもう片方にもレーザー治療を行うことが一般的。
レーザー治療は隅角が完全に癒着してしまうと治療できないため、完全に癒着する前に発見し、タイミングを逃さずレーザー治療を受けることが大切となる。
レーザー虹彩切開術には、以下の合併症がある:
・瞳孔偏位
・前房出血
・角膜混濁
・水疱性角膜症
・術後虹彩炎
・限局性白内障
・術後一過性眼圧上昇
・虹彩後癒着
・穿孔創の再閉塞
・網膜誤照射
特に、水疱性角膜症は重篤。水疱性角膜症の発症には、角膜内皮の状態、レーザー照射の総エネルギー量などが関連すると推測されている。
また、ごくまれに虹彩にあけた孔がふさがることがあるが、その場合は、再度レーザーをあてて、孔をあける
・毛様体光凝固術:
毛様体をレーザーにより破壊して、房水産生を抑制して眼圧を下げる。ただし疼痛が強く眼球癆など合併症が多いため、眼圧下降の最終手段とされている。
毛様体光凝固術には、以下の合併症がある:
・疼痛
・遷延性炎症
・視力低下, 光覚消失
・交感性眼炎
・眼球癆
・レーザー切糸術:
手術(線維柱帯切除術)後に、房水濾過量が不足している際に行われ、濾過量を増加させる。以下の合併症がある:
・結膜熱傷、穿孔
・過剰濾過
濾過手術(ろかしゅじゅつ)
現在の代表的な濾過手術である線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)では、房水を結膜下に導く手術。それ以前に行われていた濾過手術は、虹彩はめ込み術、管錐術、Scheie(シェイエ)手術等、強膜フラップを作成しない全濾過手術であった(トラベクレクトミーでは、強膜フラップを作成し過剰濾過をコントロールする、分層濾過手術)。
最も重篤な合併症として濾過胞からの晩期感染がある。
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